本研究は、「教育職員免許法の成立過程とその規定要因に関する研究」として、特に免許法の理念である「教職の専門職性の確立」の具現化という観点から、大学における教師養成教育の履修基準を規定した免許法の成立過程を分析しようとしたものである。具体的には免許法制定に関係した師範学校、文部省、CIE、教育刷新委員会等の関係諸機関が、どのような制度(大学)構想のもとで、いかなる教師養成教育、カリキュラムを考えていたのか、特に教職の専門性の中核をなす教職教養の理念と内容の分析に考察の主軸をおいて取り組んだものである。その結果、免許法の立案並びに教員養成カリキュラムの形成という観点からみた戦後日本の教員養成制度改革は、文部省、師範学校(新制「教育学部」)、そしてCIEという関係の中で形成されていったのではないかとの結論を得た。そして、そこでのモデルは、アメリカのTeachers' Collegeのカリキュラムと資格制度であったのではないかということを指摘した。特に、「大学における所定の過程」修了を要件とする免許法の基本原則、具体的な教職教養の中身と単位数等の履修基準の作成に当たっては、文部省によるアメリカ教員養成制度研究とそれを検証する師範学校、そしてそれらの取り組みをサポートするCIEという構造の中で、免許法の内容が形成されていったのでないかと考えられる。また、そこでは、いかなるカリキュラムのもとで新しい教員養成を現実化できるかという問題を内包しながらの立法化であったのではないかという指摘を加えている。なお、今後の課題としては、未発見の免許法原案の発掘の他、特に、文部省とCIEの交渉過程の詳細な分析と免許法の理念の検証を発足した新制「教育学部」でのカリキュラムの実際の分析などによって明らかにすることが必要であると考えている。
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