本研究で明らかになった知見は以下のとおりである。 (1) 19世紀末、帝国主義の時代風潮のなかで、イギリス本国と自治領・植民地との間に大学間ネットワークが形成されるに至った。 (2)その過程で、英米学術交流プログラムの創設が提案されていった。 (3)英米学術交流プログラムは、C. J.ローズによってイギリスのオックスフォード大学に設立されたローズ留学基金をモデルとしたものであった。 (4)第一次世界大戦前後、アメリカ社会にはカ-ネギ-財団やロックフェラ-財団など多くの企業財団が相次いで誕生するが、これらの財団はその文化活動の一環として社会福祉や教育に目を向け、種々の援助をおこなったが、なかでも大学・高等教育を重視し多大の資金を提供した。 (5)英米学術交流プログラムの創設というアイデアをこれらアメリカの企業財団の資金と結びつけ、その実現にあたってイニシアティヴをとり、尽力したのはF.アイデロッテを始めとするローズ・スカラーOBたちであった。 (6)こうして創設された英米学術交流プログラムの主なものには、コモンウェルス・ファンド・フェロ-シップ、グッゲンハイム・フェロ-シップなどがあった。
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