本研究は、わが国において必ずしも未だ知られていない、フランスにおける「異文化間教育」の理論的、政策的な側面について明らかにすることを目的とする萌芽的研究であり、併せてわが国の国際化に伴って生起する外国人子女、在日外国人など文化的な背景を異にする人々の教育に関する示唆を得ることを目的としている。 2年計画の初年度である本年度は、下記のような資料の収集と基礎的な分析を行い、近年のフランスにおける異文化間教育の動向を探った。 1.資料収集に関しては、フランス政府の教育政策レビュー文書(OECDへの政府報告書、1995年)、フランス政府の統合高等審議会報告書(1991年版から1995年最新版まで)、さらに各種委員会からの移民労働者子弟の教育、教育優先地域(ZEP)関連の報告書及びフランス人研究者の研究報告書等、基礎資料の収集を行うとともに、関連出版物をかなりの程度収集する事ができた。 このことにより、次年度における内容分析に取りかかることが可能となった。 内容分析については、1989年以来フランス政府のこの分野での関心がヨーロッパ統合の現実的な進捗の中で、変化しつつあること、すなわち、 (1)内なる異文化理解を前提とする移民・外国人との共生を指向する立場から、彼らをも含めた「フランス国民」形成と国民全体の教育の質的な向上に政策の重点を移しつつあること、 (2)フランスで推進されている異文化理解教育がいわばEU理解教育へと傾斜しつつあること、 (3)これと同時に移民・外国人の有する異なる文化への関心が相対的に弱まっていること、 などの傾向が明らかになってきた。 3.次年度には収集資料を基に具体的な内容分析に取りかかる予定である。
|