平成7年度はまず、進路指導に関する研究書籍・資料、雑誌記事等の収集をおこない、それらをフランス進路指導制度の歴史経緯の時代区分(1960年代以前[準備期]、1960年代〜1970年代前半[確立期]、1975年アビ改革〜1980年代[展開期]、1989年ジョスパン改革以後)ごとに、それぞれの制度の特徴と理念および課題を分析・整理した。その結果、以下のような知見が得られた。 1.1960年代以前は、ランジュヴァン・ワロン改革案における「指導の原則」の力説と「新しい学級」の実験的試行など、選抜制度の問題点を解決する方法としての進路指導の思想が明確になる時期である。 2.1960年代〜1970年代前半は、現行制度の基盤となる「観察・進路指導過程」が導入され、情報提供の仕組みや専門職員制の確立など、進路指導をめぐる機構が整備された時期である。 3.1975年アビ改革〜1980年代には、統一コレージュの創設に伴い、進路指導の制度と手続きが完備するが、同時に科学的方法開発の不十分さなどにより、理念と実態のかい離が明らかになっていった。 4.現在は、新教育基本法(1989年)の「生徒は自ら進路を構築する」という理念提唱の下に《助言による進路指導》の制度化をめざした新しい進路指導の手続きが制定され、実行に移されつつある。 次に「学級委員会」の成立経緯とその実際上の機能・運営上の問題点などを検討した。その結果、生徒本人の“自主的進路選択"と学校側のおこなう生徒の能力・適性の評価・判断における“専門性の尊重"は、「学級委員会」においては時として矛盾した形であらわれ、生徒と学校側の意見調整の機能も充分に発揮されていないことが明らかになった。
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