本年度は、昨年度実施した中学2年生を対象にした調査の分析を進めた。そこから得られた知見は次のようである。 今の子どもは、(1)「みんなで何かをするのは楽しい」と集団活動を肯定するのは、男女とも6割を越えるが、(2)「一人でいるのは気楽でいい」と多少なりとも思うのは、男子で8割以上、女子でも7割近く、(3)「他の人に合わせるのは疲れる」と多少なりとも思うのは、男女とも8割を越える。ここからは、今の子どもが集団内の対人関係に何らかのストレスを感じていることがうかがえよう。15EA03:また、マートンのアノミー理論を適用して、「今の社会では勝ち負けや順位が重視されるから、落ちこぼれになるとみじめだ」という文化的目標の強さと、「授業がよくわかる」という文化的目標を達成するための制度的手段の有無とを組み合わせ、いじめ行為の経験の頻度やストレスの強さとの関係を見てみると、(4)問題傾向(いじめの加害経験あり、いじめの被害経験あり、ストレスが強い、の3つを尺度とした)を最も強く示すのは、成績競争にこだわっているにもかかわらず成績が良くない(文化的目標が強いにもかかわらず手段を有しない)者であり、その反対に(5)最も問題傾向が弱いのは、成績競争にこだわっていないうえに成績がよい(文化的目標が弱いうえに手段を有している)者である。そして、(6)成績がよくても競争にこだわっている(手段を有してはいるが文化的目標が強い)者も、かなり強い問題傾向を示す、ことが明らかになった。
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