平成8年度は、米国において収集した資料の整理分析を続行中である。新たに国内では、1960年以降の教育開発の動きに関わる資料を、東京大学国際資料室を初めとして、各種機関において収集中である。 戦後のブレトン・ウッズ体制の要としての世界銀行は、米国が主導する自由主義陣営のイデオロギーを自ずから代表するものとして、米国の国際文化政策と有形無形の関係を保ってきている。発展途上国全体に対する教育開発において、ユネスコをしのぐ影響力を持つようになった世界銀行の歩みは、米国の政策に総体的に見るためにも、是非とも把握すべき基本的事項である。 本年は、同機関に関わる戦後の開発理念の跡づけに努める一方、この方面に関わる「開発教育」分野をアメリカが生んできた経緯に注目している。またラテンアメリカにおける教育開発が持っていた性格や特徴を上記理念との関連で考察する試みを行っている。1960年代、世界銀行はむしろ職業教育や中等教育以上の段階において、開発プロジェクトを進めていた。1970年代は、それまでの開発理念のオールタナティブが模索された時期であり、ベーシック・ヒューマン・ニーズが謳われ、教育の上でも様々な理論的展開とそれに対する対応が見られる。本年はジャマイカとコロンビアを参照しつつ、主に70年代までのこうした流れについての概括を行った。
|