本研究課題の第1の目的である「授業に関する省察と教師の成長の文献研究」に関しては、特に省察に関しては、1985年以降の文献、特に1990年以降の近年の欧米における動向を、本年度は主に検討した。そして、省察研究の教師教育への導入が、主に初任期の教育のあり方として検討されており、熟練教師のためにもこの概念をさらに検討することが必要である点、また実際の教育研究においてはVan Manen(1977)が指摘する省察の3レベルのうち、経験主義的・分析的視点からの研究が主となっており、解釈学的・現象学的水準、批判的・弁証法的水準からの研究が少ないこと、またShonの指摘する“reflection after action"の研究は多いが、“reflection in action"の研究が少ないことを明らかにし、現在この点を展望論文として整理し、執筆中である。さらに、わが国で行われてきている授業実践報告や研究紀要をこの概念枠組みから検討するため、現在文献の収集と分析を行っているところである。また、教師の専門的成長に関してはライフコース、生涯発達という視点から、教師の危機の問題を捉え、「学習評価研究」に執筆し発表した。 第2の目的である「省察過程に関する実証研究」については、予備調査を行った。1人の熟練教師の授業を継続的にビデオ撮影し、授業後にそのビデオを再生しながら、筆者との面接を通して省察を行ってもらうことを2つの小学校2年生の国語の授業に関して行い、現在その授業ならびに省察の会話を言語資料として書き起こし、分析を行っており、本年度末までには、1論文として整理し発表する予定である。また教師の成長に伴う信念の変容に関する実証研究をまとめて「教育心理学研究」に執筆し、現在印刷中である。 以上のように、おおむね順調に研究は進められている。
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