本研究課題の第1の目的である「教師の省察」に関する研究に関して、1985年から近年での国内外での動向について、約110本の研究をレビューした。そこで明らかになった点の一つは、省察の概念の展開に伴う多義性の問題であり、特に国内での省察研究では技術的知に関する省察、省察の方法論は検討されているが、省察の認識過程自体や批判的省察の視点による研究がみられない点、また近年の米国での動向の一つに、フェミニズム教育学の視点から教師-生徒間の関係性やケアの視点からの省察の必要性が指摘されていること、また第2に初期の研究が教師個人の自己省察に焦点をあてた研究が多かったのに対し、近年はアクションリサーチによる研究がとりいれられ、学校-大学・教育委員会の連携により、個としての省察だけではなく、メンタリングやカンファレンスなど同僚生を軸にした省察過程の検討がなされていること、かつトップダウンではなく教師自らの声による省察の重視がなされていること、また第3に海外での省察研究では実習生や新任教員の省察を促す開発プログラムが進められているがわが国の実態を考えるならば中堅、熟練教員の省察を考えていく必要性を指摘した。 また第2の目的としての教師の専門的成長に関しては、実践知としてのイメージに焦点をあて、第1研究では学生から熟練教師までを対象にし、教職経験年数とともに授業イメージが変容すること、第2に学生を対象に授業一般の授業イメージのみならず教科固有のイメージを検討し、その間には時には非一貫性が認められること、第3に教師間の授業カンファレンスにおける談話の分析からイメージが専門的な実践知の共有のための重要な役割を担っており、それが一つの教師文化を形成していることを明らかにした。
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