この研究は、平成7年度に井ノ口淳三によって行なわれていたものを、平成8年度に太田によって引き継がれて行なわれた。 1592年に南ボヘミアで生まれたコメニウスの生誕400年を記念して、1992年には内外で多くの研究発表が行なわれた。この研究は、それらの成果を踏まえながら、コメニウスの著作の中でも特に有名は『世界図絵』を主たる対象とし、彼の汎知学思想とのかかわりを明らかにしようとした。 コメニウスの『世界図絵』は、世界で最初のさし絵入り教科書と称されているが、そこに掲載されている絵は、当時の職人の仕事場や社会風俗を知るうえで貴重なものである。また、17世紀から18世紀にかけて版を重ねるにつれて、掲載されている絵が微妙に変化しており、それらを比較対照することによって、それぞれの時代の子どもや教科書にかける思想の変遷を窺い知ることができる。逆に、コメニウスの絵そのものが、当時の版画や絵画の手法に深い影響を受けており、さし絵や図版を多く収録している書物との比較研究も興味をそそられる。 本研究では、井ノ口、太田によって国内のかなりの資料の収集することができた。また井の口は1995年のチェコ訪問の際にかなりの数の異版本を閲覧しており、現在はチェコ共和国に留学して引き続き資料を収集中である。 太田は、それらの資料の閲覧、検索に便利なように、コンピュータを使ったデータベースを作成した。文字情報だけでなく、数多くの図版を検索し比較検討するうえで、コンピュータを駆使することは非常に有益である。
|