この研究は、平成7年度に井ノ口淳三によって行なわれていたものを、平成8年度に太田によって引き継がれて行なわれた。 1592年に南ボヘミアで生まれたコメニウスの生誕400年を記念して、1992年には内外で多くの研究発表が行なわれた。この研究は、それらの成果を踏まえながら、コメニウスの著作の中でも特に有名な『世界図絵』を主たる対象とし、彼の汎知学思想とのかかわりを明らかにしようとした。 井ノ口は、1992年、1995年のチェコ訪問の際にかなりの数の異版本を閲覧しており、現在はチェコ共和国に留学して引き続き資料を収集中である。 とりわけ今回は、1719年に出版された『世界図絵 第II部』に焦点をあて、それが実はコメニウス自身のものではなく、デスラ-という人物のものであることを明らかにし、そこに存在する教育意図の相違を分析した。 太田は、『世界図絵』の様々な版を閲覧、検索に便利なように、コンピュータ上で検索できるシステムの構築を提案し、とりあえず、1658年のラテン語-ドイツ語版、1659年の英語版、1777年の英語版、そして日本語版が比較検討できる試作版を制作した。制作に使用したソフトは、Apple社のハイパーカードである。
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