「生涯学習振興法」に基づく各府県及び市町村の生涯学習振興の実態とその推進行政の課題について、事例研究的に考察した。研究対象の地域選択に当っては、日本生涯教育学会の研究報告書(昭和59年)を参考にし、歴史的過程を重視した。 本研究の成果を、今後の研究課題という観点から、生涯学習行政の課題について整理すると、とくに次の5点が指摘できよう。 1.国の審議会答申や各省庁の生涯学習関連の事業補助金が、府県でのその施策の展開に大きな効果をもっているが、これまでの社会教育等の取り組みの成果を反映させた施策を展開させる条件を考究する必要がある。 2.府県、市町村とも、首長の生涯学習の理解とその振興へのリーダーシップが、その施策の取り上げ方に大きくかかわっており、重要なポイントになっている。 3.府県のその基盤整備の程度とそれへの熱意も、市町村の取り組みの大きな要因であるが、市町村でのその施策の成果の定着を図る方策について検討する必要がある。 4.地域住民の学習ニーズの多様化と高度化に対応して、広域的な学習機会を計画的に提供する必要がある。 5.生涯学習へのきっかけを十分につかみ得ていない人々への対応策を、社会教育のあり方や、それへの府県の支援の方法なども含めて、具体的に考案されるべきであろう。
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