8年度は、前年度収集した史料の解読と、解読の進行につれて派生した補充史料の調査を主として行った。 史料の中心となる峯家文書の日記は、大部分の解読を終えた。この日記の解読に、塾の学習記録、出席記録などの解読を合わせることで、峯家で展開した私塾教育の日常的実態が明らかになった。特に、日記と出席記録、学習記録の三点をつきあわせると、塾の規模、学習形態、教育形態などが浮き彫りにできそうである。具体的には、峯家の塾の場合、教育が午前の限られた時間にのみ行われていたこと、しかも学習形態としては自学自習が中心であったこと、塾生の出席状況が現在の学校から考えれば恐ろしく低かったことなどが判明した。それらの史料は、研究上価値が高いと考えられるので、史料の中心部分を9年度の研究成果の報告の中に史料編として印刷の予定である。 地域の教育構造を見るうえで欠かせないと考える寺小屋の存在確認はまだ進んでいない。全国的にまんべんなく存在している師匠塚を手掛かりにしているが、唐津藩域では極端に少ないようで、師匠塚研究の上でも存在がまれと言う意味で注目すべき地域であるといえよう。 そのほか、西九州一帯に影響を与えたと考えられる平戸藩の儒者についても補充調査を行ったが、はっきりした影響は確認できず、その評価についてはこれからの課題である。
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