本研究成果報告書は、研究論文の部と資料の部の2部構成となっている。 1.研究論文の部:本研究課題をテーマとする研究論文は、まず1994年制定の連邦法「就学から就職への機会保証法」の成立過程をたどることによって、連邦政府の教育政策推進の背景を概観し、学校と企業あるいは地域社会との連携の奨励が国策として進められていることを指摘し、特にそれは、それ以前の「教育パートナーシップ法」、「カ-ル・D・パーキンズ法」等の一連の法律との関連で、同法に盛られた連邦政府の教育政策とその理論を追求し、その影響に言及する。ついで同論文は、同法が構想する「就学から就職への機会保証」の全体構造が、「学校を基盤とする学習」、「仕事を基盤とする学習」及び「両者を結びつける諸活動」の三つの構成要素から成ると据え、とりわけ「仕事を基盤とする学習」の諸過程と、こりまでにアメリカで数多く展開してきたその学習のモデルを概略的に説明する。最後に同論文は、「学校を基盤とする実践事例」2件、「仕事を基盤とする実践事例」3件及び「統合的な実践事例」2件を掲げた。 2.資料の部:報告書は、州規模での「統合的な実践事例」として、「オハイオ州の職業・キャリア教育制度とキャリア・パスポート」と取り上げた。最初の論文は、国立教育研究所の特別研究の『中間報告書(I)』(平成8年3月)に掲載の筆者の論文を再掲載し、これに続く3点の資料「個別的なキャリア計画」の全体的な説明の役割を持っている。オハイオ州は、下は初等教育から始まって、ミドレスクール及びハイスクールへと学校段階を追った接続関係のある極めて総合的な「就学から就職への移行体系」を有している。
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