本年度の研究において、特に力を入れたのは、研究の中心課題であるアンデス形成期の祭祀センター諸遺跡の平面図や構造のわかる報告書や研究論文の渉猟である。また、研究代表者自身の調査が明らかにしたクントゥル・ワシ遺跡、ワカロマ遺跡、セロ・ブランコ遺跡の図面の整理も行って、比較研究のための基礎資料の作成を行った。現在手元に集積できた形成期祭祀センターの図面資料は、ペル-北高地のクントゥル・ワシ、ワカロマ、ライソン、セロ・ブランコ、北高地南部のコトシュ、パウカルバンバ、サハラパクタ、ラ・パンパのものである。今後、比較研究のために、北高地南部のチャビン・デ・ワンタル、そして北ならびに中央海岸の形成期遺跡に関する平面図および構造図を報告書などから選び出し、あるいは記述から復元する必要がある。 クントゥル・ワシ調査では、建築や広場の床下を走る排水溝の仕組みがかなりの程度明らかになった。このことはこれまで部分的にしかわからなかった高地の神殿に伴う地下式排水溝の意味について、その解明を一歩進めるところとなり、その図下作業もほぼ終了した。 年代測定もある程度進んでおり、クントゥル・ワシ神殿の測定結果は、クントゥル・ワシ期の神殿が紀元前800年から450年頃、つづくコパ期の神殿が450年から250年頃までと出て、北高地北部の他の祭祀センターの年代と矛盾しないことがわかった。ただし、北高地南部の大センターであるチャビン・デ・ワンタルの年代とは矛盾する点があり、今後さらに関連する遺跡の年代測定を充分な形で行い、形成期の時間的幅や各遺跡の時間的位置づけを明確にし、比較研究の基礎としたい。 なお、クントゥル・ワシとセロ・ブランコの調査成果は、スペイン語の報告書として出版した。また、一般向けの形ではあるが、研究成果の一端を日本語の書物の中で紹介した。
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