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1996 年度 実績報告書

話者が筆をとる時-住民参加による民族誌作成の実践的研究

研究課題

研究課題/領域番号 07610314
研究機関山口県立大学

研究代表者

安渓 遊地  山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (50149027)

キーワード地域研究 / フィールドワーク / 民族誌 / 研究倫理 / 西表島(いりおもてじま)
研究概要

沖縄県西表島の干立集落の民俗や方言の記録づくりに意欲をもつ話者との共同作業の結果、これまでまとまった記録のなかったこの集落についての400字づめ原稿用紙約200枚の地域誌が完成した。これは、印刷用の版下として話者に贈呈した。地域誌づくりは島の住民の大きな関心を呼び起こした。例えば、祭の中のある芸能の台詞に細部で食い違う複数の伝承がある時、どれを記録に収録すべきかをめぐって激しい議論が闘わされることを知った。干立集落では、シチという大きな祭の記録作成の内容について後でもめることがないよう、公民館の臨時総会が催されたほどである。また、西表島では、あくまで地域住民が主体となって祭とその記録を進めるという意識も育ってきている。近年、祭の取材のために訪れる写真・ビデオの撮影班が増えて、行事を円滑に進める妨げと感じられるまでになっているのだが、干立公民館では、次のような4条件のもとに取材を許可することを決めてこの問題を解決している。それは、「1、取材許可の腕章を付ける、2、ともに祈りをささげる、3、立ち入り禁止区域を守る、4、公表の前に許可を求める」の4つである。その結果、主催する側としては近年になくスムーズに祭ができ、観光用でない、神事として祭の性格も守られると感じられたという。共同の地域誌づくりの実践的試みを通して明らかになった問題点は、地域誌づくりという一見中立な行為も、助産婦役の研究者が外部の権威とみなされる結果、集落内に内在する政治人類学的な対立をあらわにしてしまうという結果におわる恐れがあるという事実であった。2年間の研究の結論としては、1)たとえ、話者が筆をとるにしても、「記録」という行為はそれにともなう「撹乱」について事前に十全の配慮を要すること。2)「記録」のガイドライン作りも、住民が主体となって進めるものであって、外部の研究者の役割は、そのための助言程度であること。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (3件)

  • [文献書誌] 安渓遊地: "聞き書きの面白さ-西表島にワニの足跡を追う(上)" 沖縄タイムス. 10月2日号. (1996)

  • [文献書誌] 安渓遊地: "古文書の世界から-西表島にワニの足跡を追う(中)" 沖縄タイムス. 10月3日号. (1996)

  • [文献書誌] 安渓遊地: "話者が筆をとる時-西表島にワニの足跡を追う(下)" 沖縄タイムス. 10月4日号. (1996)

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公開日: 1999-03-08   更新日: 2016-04-21  

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