研究概要 |
本研究の目的は、戦後の在日朝鮮・韓国人(以後「在日」と表記)と彼らの子孫の「民族」としてのイメージが、日本人の間でどのように形成され、変容してきたか、及び「在日」の人たちの間での日本人のイメージがどのように形成され、変容してきたかという双方でのイメージ形成の要因を分析・考察することにある。平成7年度末現在45,182人の韓国・朝鮮籍の人たちが生活する、京都府での主要新聞の一つ「京都新聞」掲載の「在日」関連記事の収集、筆者の勤務する大学の学生に対するアンケート調査、そして京都市、川崎市、東京都荒川区、福岡市の在日の方々の生活史の聞き取り調査、そして既存の文献調査を主な資料収集源とした。 戦前の日本人での間での朝鮮人のマイナス・イメージの形成には、新聞が大きく係わっていることが指摘されているが、戦後50年余りの間に新聞の在日関連記事の扱い方は、マイナスからプラスへと大きく転換してきた。敗戦直後の記事の特徴としては、戦前からの差別意識が直接表出しているような調子のものが散見でき、量的にはひじょうに限られていた。言い換えれば、積極的に在日の人たちのプラス・イメージを醸成するような記事はほとんどなかった。この状況はしばらく続き、50年代、60年代に行われたいくつかのイメージ調査での、「朝鮮人は不潔、ずるい、卑屈」といったようなマイナス・イメージが強くもたれている、という結果にも反映されている。しかし、とくに80年代以降、在日関連記事は質量ともに大きく変化したといえる。その扱う範囲は多様化し、量的にも増加している。しかも、積極的にプラス・イメージを醸成するような記事も多くなっている。しかし、日本人の間の在日イメージは、あいまいなマイナス・イメージへと変化したにすぎない、ということがアンケート調査の結果をつうじても明らかになった。
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