前年度(二年目)に続き、文献蒐集・史料の解読につとめた。これまで活字化されていない史料の読解を試みるため、歴史民俗博物館所蔵の『顕広王記』『愚昧記』原本の紙焼写真を入手した。武具・武器についても同じく歴史民俗博物館蔵「前田青邨武器・武具コレクション」を熟覧するとともに、発掘資料を中心とした情報の蒐集に務めた。また京都市在住の第二一代弓師・柴田勘十郎氏の仕事場を訪問し、和弓の製作・性能にかんする技術面での具体的教示を得た。その他、備品として鎌倉市教育委員会他編『集成鎌倉の発掘 武家屋敷編(1)〜(3)』、沈従文編『中国古代の服飾研究』などを購入した。研究費補助の最終年度にあたる本年は、古代・中世の武士にとって、大きな意味をもった馬にかんして新知見をえることをめざし、一九九七年八月末に長野県・望月の牧跡の現地調査を行い、馬の飼育と調達方法について、文献とつきあわせながら考察した。以上と並行して、日本史研究会一九九七年度大会の全体会シンポジュームの報告者となり、準備過程から大会当日まで、多くの研究者と討論を繰り返し、最終的に「中世成立期における国家・社会と武力」と題する論文を青果物としてまとめることができた(『日本史研究』四二七号、一九九八年三月刊行予定)。
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