本研究の目的は、第一に、都市とは何かを定義することであり、第二に、その都市の定義に基づいて日本の都市の特質を浮き彫りにすることであった。そして、第一の課題については、都市とは政治権力の所在地を中心に、意図的、計画的に創出された交易中心である(従って首都こそ都市の典型だ)という結論を得、後者の課題については、奇妙な結論だが、意図性、計画性のないところが日本の都市の特徴だという結論に到達した。そこで次に、ではなぜ日本の都市には意図性、計画性が弱いのかを、日本近代都市に即して考えた。そして都市を創出する権力の意図を支える、社会の文化的アイデンティティーの弱さに原因があるという結論に到達した。近代日本人の美意識を創り上げた岡倉天心のアジア主義や、日露戦争後広まった日本主義を素材に以上のことを考えた。
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