都市とは単なる人口の集積地でもなければ、交易の中心でもない。それは政治権力の集中地であり、政治権力によって意図的に創り出された計画的空間である。だから都市の典型をみようとすれば、一国の首都をまずみなければならない。近代日本においてはまず東京をみなければならない。しかし大切なことは、都市を創り出す意図や計画は権力の正当性を支える文化があってはじめて生まれるということである。だが後れて資本主義世界体制に参加した日本にとって、自立的な文化を創り出し維持していくことは並大抵のことではなかった。岡倉天心のアジア主義創出の試みが挫折したことなどはその難しさを示す一例であった。明治20年代に起こったアジア主義に基づく美観都市建設の試みは、明治30年代には挫折していた。かくて日本には都市計画を支える強烈な文化的アイデンティティーがなかった。だから都市はいつでもどこでも計画なき都市として造られた。
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