研究概要 |
本年度は、山口・広島・岡山3県の近世港町を中心におこなった史料蒐集調査に終始した。なかでも萩(浜崎)と玉島(乙島)の(北国)問屋に関する史料、下関の大年寄に関する史料,下津井の町に関する史料を各関係機関で閲覧した。それに以前から史料の解読をおこなっている尾道の史料を加えて,市と町に関する論理展開を試みているが,まだ史料の吟味や解読途中にまとまった結論を出すまでには至ってない。が,史料を読みながら商人仲間の成立に関して,現在次のような方向で検討をおこなっている。 (1)瀬戸内海各港町における商人仲間は,その多くが島原の乱にさいし,国家的な「役」(すなわちここでは自己の営業を犠牲にして輸送手段などを国家に一時的に提供すること)を負担した商人たちが,のちにその由緒をたてにして領主から商人仲間として承認されているのではないか。 (2)また商人仲間のうち問屋仲間に関しては,(1)に加えて戦国末期から町人として存在し続けてきたことが必須の条件となっているのではないだろうか。 今後は,以上の2点をより明確にし,さらに近世前期の都市の展開にどのように位置づけるかが課題となるし,またなによりも本来の課題である近世都市の市場のあり方と町の関係について,具体的な実態の解明がもとめられるし,そしてそれをもとにした市と町,あるいは商人と町人の関係について明らかにしていきたいと考えている。
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