本研究は、近世藩領社会の歴史的展開を阿波・淡路両国の史料にもとづいて具体的に検討しようとするものである。研究目的を達成するために、これまで、主として関連史料の所在調査と収集作業を中心として研究を進めてきた。以下、現時点における本研究の成果について、その概要を報告したい。 (1)関連史料の収集 本研究のために、各地に関連史料の調査・収集を行った。そのうち、主要な文書としては、(1)蜂須賀家文書(国文学研究資料館史料館所蔵)、(2)古郷家文書(徳島県三好郡池田町公民館保管)、(3)大粟家文書(徳島県名西郡神山町・大粟秀男氏所蔵)、(4)菊川家文書(兵庫県洲本市・淡路文化史料館保管)、高田家文書(兵庫県洲本市・淡路文化史料館保管)、新見貫二氏収集文書(兵庫県洲本市・淡路文化史料館保管)、武田家文書(徳島県立文書館保管)などがある。 収集史料は、現在整理中であるが、これまでほとんど未発掘であった町方史料を収集することができたのをはじめ、御用留や年貢・夫役関係史料、良質の用水関係史料などを集めることができたのは、今後の研究を発展させるうえで大きな収穫であった。 (2)収集史料の検討・分析 収集史料の検討・分析作業には、未だほとんど着手できていないが、これまでに徳島藩領における藩政の成立と農村を中心とした基礎構造の展開を検討した論考「徳島藩の成立と領国経営」をまとめることができた。今後、さらに収集史料の分析をふまえ、(1)近世藩領社会における村・町の仕組みと領主的支配、(2)村方における年貢・夫役負担体系、(3)藩領社会における身分制の展開、などの諸課題について考察を進め、成果を発表していく所存である。
|