昨年度に刊行された峰岸純夫・村井章介編『中世東国の物流と都市』(山川出版社)とその中に収載された峰岸「中世東国水運史研究の現状と問題点」は、多くの研究者の論文に引用されたり『史学雑誌』の書評に掲載され、研究状況の推進に一定の役割を果した。 本年度は、この編書の中で使用された史料をもとに、その他史料も加えて300点近くの中世東国水運史史料の蒐集・整理をおこない、史料のコンピューター入力を実施した。文献目録も含めて、数年後に刊行を目ざしたい。 今年度の研究としては、3月上旬に霞ヶ浦と常陸川水系の湊の分布・立地などの調査をおこない、この時期に開催された土浦市でのシンポジューム「中世の霞ヶ浦」に参加し、まとめの発言をおこなった。また金沢六浦湊を抑える海城の調査をおこない現地を探索したが、城部遺構を確認することができなかった。同様な海城としては、館山市稲村城の文献調査と現地調査をおこなった。 私も含めた主張によって、学界の研究動向は、水運だけを突出させるのではなく、陸運との関係や当該社会のなかでの交通・交易の位置づけを全体的に把握していこうとする方向に向かっている。この点で、数年間の研究蓄積をまとめている。
|