本研究の目的は、大嘗祭のみに片寄った研究ではなく、剣璽渡御儀礼・即位式をも考察の対象とし、広義の即位儀礼として、各儀式・祭儀の歴史的変遷と関連を勘案し、総合的に考察を行い、剣璽渡御儀礼・即位式・大嘗祭という即位儀礼が整う桓武・平城朝における即位儀礼の歴史的意義付けを明確にすることにある。 平成8年は、本研究の2年目にあたり、当初の年次計画に従い、古代即位儀礼に関する基礎史料の収集と整理を略終了した。具体的には下記の作業を実施した。 (1)「六国史」、「律令格式」、儀式書、平安朝古記録、即位儀礼関係部類記、或いは、「大日本史料」「古事類苑」「帝室制度史」等の編纂書、より、各天皇ごとの、剣璽渡御儀礼・即位式・大嘗祭についての関連史料を摘出し、さらに、必要な写本等の調査を実施し、基礎史料の収集と充実を図った。 その範囲は、大嘗祭が成立する天武・持統天皇から平安末の後鳥羽天皇までとする。各儀式・祭儀の相互関連を念頭に置きつつ、具体的な儀式次第・実態とその歴史的変遷を復元する。 (2)古代即位儀礼に関する研究文献(研究著書・論文)の収集。 (3)(1)(2)により収集された史資料の整理・活用のために、本研究者が既に作成しつつある史料年表稿・文献目録稿をもとにして、古代即位儀礼関係史料年表、即位儀礼関係研究文献目録を、コンピュータを利用して作成し、データベースを構築する作業を略終え、その研究成果として、「古代即位儀礼史料年表稿I・II・III」(『皇学館大学神道研究所所報』50・51・52)を報告した。
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