本年度は、北海道・沖縄県及び島嶼の特別町村制の基礎的自治体業務の実態を把握する史料の調査、また本土府県の関連する諸県の史料調査を行った。さらに、北海道における制度成立過程について論文を執筆した。 すなわち、北海道、沖縄県、岐阜県、山梨県、京都府、福井県などについて、主として引継文書目録、基本法令の調査、収集(コピー、マイクロコピー)を行った。沖縄県については数少ない戦前の行政文書について概要調査を行った。 また、「北海道・一・二級町村制の成立」をまとめ、論文発表の準備を行っている。同稿では、北海道の制度が、当初、在野からの提言として発議され、これが制度制定者側(北海道庁ついで内務省、政府)の構想に継承されていったこと、制度の内容が北海道を特別な地域として位置づける、「特別市町村制」として構想されるが、全国の市制町村制の枠組みの中のバリエーションであったこと、制度設定者の制度理解には、土地所有を地域統合の基底とする認識があり、基礎的自治体の運営も土地所有者に主体的に担われ、とくに名望家の参加によって維持される構想であったこと、したがって北海道・沖縄等にはその前提が欠けていたと、認識されていたことが、指摘できた。
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