第二次世界大戦時の人造石油工場建設の経緯と生産実態を明らかにするため、当時国内人造石油生産の主力であった北海道人造石油滝川工場に焦点をあて、以下の側面から調査を進め成果を得た。 1.滝川市に現存する関係資料の調査 滝川市郷土館所蔵の旧北海道人造石油滝川工場関係資料の調査を実施した。会社書類、文献・報告書、工場図面、写真などから成る約1000点の資料で、同郷土館の仮目録を手がかりに資料照合作業をしその概要を把握した。その結果、一連の資料は現存するまとまった人造石油工場関係一次資料として国内唯一のものであることを確認した。詳細は今後の調査によらなければならないが、とくに生産計画・実態と実績、工場の組織・機構、工場内建物の配置、終戦に伴う化学工業会社への転換過程などの解明に重点をおくことになる。また、現存する唯一の建造物である旧研究所について現地調査を実施し、市郷土館所蔵資料中の建物配置図、平面図と対比した。 2.工場関係者からの聞取り調査 渡辺真一、石田亮一の両氏より滝川工場、および当時の国内人造石油業の事情について証言を得た。しかし、滝川工場の組織・機構を考慮して考えていた当初の聞取り調査計画は今後の課題として残された。 3.文献・記録資料調査 北海道の人造石油生産を全国的視野から位置づけるため、昭和戦前期の燃料政策、人造石油製造事業計画、政策資料、国内および旧満州・樺太・朝鮮に建設された人造石油工場、人造石油技術開発に関する資料を国立国会図書館、防衛研究所図書館、通産研究所図書館、九州大学石炭研究資料センターなどで調査・収集した。
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