周代官制に関連する史料のデータベース化を重点課題とし、金文史料の著録・断代・拓本・器影等にわたるデータベースの構築、および、文献史料(『周礼』・『春秋左氏伝』等)のテクスト・データ構築を行った。作業そのものは現在も進行中であるが、作業の過程において、西周期官制の研究が従来の金文断代の成果を必ずしも充分には反映していないこと、換言すれば、官制研究に時系列的変化を認める視点が不足していることが明らかとなった。今後は、官制の出現・展開・変化といった時系列的研究を一層進める必要がある。 また、周代官制研究の一応の展望を得るため、後世の宰相・丞相へと連なる「宰」職の時系列的研究を行い、その成果を論文「宰の研究」として発表した。宰職は「家」あるいは「室」とよばれた「家産」の管理を本来的な職掌としつつも、西周期から東周期へと至る時系列においてその地位を変化させ、例えば『周礼』の冢宰職にみられるような最高位の官職へと質的に変化していったことを明らにした。この研究によって、後世の官制を無批判に西周・東周期にあてはめることの危険性、ならびに官制の時系列的研究の必要性を示し得たと考えるが、同時に、官制の出現・展開・変化がいわゆる「封建制」的社会構造のなかで起こったことも重要な問題であると考える。今後は、「封建制」と官制の関わりについて、個々の官職の時系列的研究などを含めた、より具体的な考察が必要となろう。
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