1.西日本に現存する朝鮮から伝来した文化財、なかでも梵鐘、仏画等の銘文を主に調査した。この調査によって、例えば、梵鐘が我が国へ伝来した二つの契機(請来と略来)が判明し、梵鐘の個々の渡来の経緯を解明する手法が得られた。その成果の一部は新聞(「西日本新聞」1996年3月22日、朝刊)に掲載し、また研究誌『梵鐘』6号(1997年6月に掲載予定)に発表される。 2.梵鐘の渡来の経緯の判明にともなって、ほかの文物(仏画、仏典、書籍)の渡来の契機も予測可能となり、朝鮮の高麗、朝鮮時代の文化財の創造と応用の社会・政治史を考察する手掛かりを得た 3.『高麗史』、『経国大典』、『朝鮮王朝実録』等の文献にもとづいて、高麗と朝鮮王朝時代の中央・地方行政制度と同時代の日本のそれとの比較研究を行い、高麗・朝鮮王朝の統治形態の特徴やその成立背景を明らかにした。 4.『宗家文庫』記録類のなかから、明治維新以後の日朝外交交渉の最大の争点となった書契形式の変化を確認することができた。また、形式の異なる維新後の書契は明治元年9月付けとなっており、早い段階から交渉の争点となる書契が作成されていたことが判明した。 5.今後の研究計画・・・『朝鮮梵鐘銘文集成』を作成して、朝鮮史と日朝交流史研究に資料を提供する。
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