中国古代、ことに前2世紀から西暦2世紀にかけての漢代には、支配者階層および福裕な豪族層のあいだで「厚葬の風」が大流行し、墳墓の壁面を飾る壁画・画像石・画像磚などの風俗画が多く出現している。これらは貴重な中国古代の社会史資料である。従来、画像資料の研究はもっぱら美術史の分野で取り扱われてきたが、出土文書や伝存の文献史料を併用することで、当時の社会の多くの側面を分析することができる。 私は、これまで漢代の社会を解析するため関連画像資料の収集に努めてきた。そして一部については書物として刊行もした。しかし、体系的な収集でなかったので、平成7年度の研究においては、以下の点を重点的に整理してみた。 (1)漢代画像関係資料の収集:主として、東海大学・早稲田大学・東大東洋文化研究所・京都大学人文科学研究所の付属図書館所蔵の文物考古関係定期刊行物より、画像図版を複写して、それの貼り込み台帳の作成に努めた。これは、最終的に画像の索引をこしらえるための準備作業である。 (2)中国の考古学研究者からの情報収集:とくに来日中の四川省重慶市博物館学芸員羅二虎氏、および中国歴史博物館学芸員信立祥氏から、中国における漢代画像資料研究の概況をインタビュー方法によって聞書きをした。 (3)漢代画像資料文献目録の作成:今後の研究基礎となるので、従来私が蓄積してきた文献カードを大幅に増補した。 (4)研究方法論の模索:平成7年日本泰漢史研究会・中国史学会共催のシンポジウムで「泰漢時代の生活史の諸問題」について発表した。この内容は、主として画像資料をどのように歴史に応用するのかについてである。
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