研究概要 |
アヘン戦争後における中国医療伝道の発展は局地的であるとはいっても、中国人に欧米の近代医学を紹介し、これによって、キリスト教伝道によりよき地盤を形成したことは重要である。しかしながら近代医学の恩恵をより広い地域に及ぼし、それによって医療伝導の漸進的な発展をはかっていくためには、地域的な病院の開設だけでは十分ではないことは当然であった。 ここにおいて考えられたことは、中国人に対する医学教育を拡充することであり、その一環として、中国語医学書を刊行することを考慮するに至った。初期の中国語医学書としては、ホブソンHobson,B(中国名、合信)が刊行した『全体新論』『西医略論』『婦嬰新設』『内科新設』の四著が重要であり、またカ-Kerr,J.G.(中国名嘉約翰)が刊行した『西薬略釈』『皮膚新編』等の諸著も注目すべきものである。 本年度においては、中国プロテスタント医療伝道開拓期における入華宣教師の諸活動を概観しつつ、特にホブソンおよびカ-の中国語・医学書・薬物書の内容および特色について、昨年度に引き続いて考察し、研究を深めた。次にこれらの中国語医学書がわが国におよぼした影響についても、研究をより深化し、特にホブソンの中国語医学書が、わが国に及ぼした影響については、さまざまな視点から考察した。なお入華プロテスタント宣教師が出版した欧文および中国語の定期刊行誌の記事についても検討し、中国医療伝道の展開先がどのようであったかについて、具体的に明らかにした。
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