研究概要 |
(1)前年度に引き続き,『史記』の史料学的分析を行った。『史記』の編纂過程につき,「史記原始-春秋期-」(未刊)・「同-戦国期-」(『立命館文学』547,1996年9月)の二篇をまとめ,『史記』の春秋・戦国各部分の基本的な編纂過程を解明した。 (2)編纂過程解明の結果,『史記』の原資料についてかなり確度の高い推定を行うことが可能となり,これらを踏まえて「史記戦国紀年考」(未刊)をまとめた。『史記』の戦国紀年については従来様々な修正案が提出されているが,それらは『史記』の原資料や編纂過程に関する配慮が不十分であった。拙稿の作業により,現在の資料状況に基づく最も確度の高い『史記』戦国紀年の復元が達成されたものと考える。 (3)戦国紀年復元の結果,『史記』諸篇の戦国部分に散在する断片的な材料を編年的に扱うことが可能になった。これを踏まえ,戦国初・中期すなわち『史記』六国年表の始まる前476年から斉泯王が敗滅した前284年に至る時期に関する『史記』及び『左伝』『竹書紀年』などの編年記に属する記事を年次ごとに配列した。 (4)この結果,「春秋晋覇考」(『史林』76-3,1993年5月)・「春秋世族考」(『東洋史研究』53-4,1995年3月)で解明した春秋期に関する状況を踏まえた上で,これと連続的に春秋戦国交代期中原の政治社会的動向を解明することや,「秦史研究序説」(『史林』78-3,1995年5月)ではなお不十分であった戦国初・中期の秦史の推移を中原との関連のもとに解明することが可能になった。現在これらの作業を進めつつある。 (5)以上の作業と関連するものとして,『史記を探る-その成り立ちと中国史学の確立-』,東方書店,1996年5月)・「周太史 讖語考」(未刊)・「国制史」(未刊)・「孟子小考-戦国中期の国家と社会-」(未刊)を執筆した。
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