研究概要 |
1)本年度は、昨年度に続いて、ハンガリーにおける農業社会主義の総合的な研究を進めた。昨年度の研究の結果、農業社会主義が展開した時代と地域を総合した全体像をほぼ描き出すことができた。その発展段階は,1891-94年のハンガリー南部を中心とした段階、1894-97年の中部を中心とした段階、1897-98年の北西部を中心とした段階などに区分できた。南部は、大地主制と貧しいタニャ(散村)農民とが混在するところであり、中部は、同じ混在のなかで商品生産がもう少し進んだ所であり、北西部は、巨大経営のなかに極貧の農民が労働者として働いている所である。 2)本年度は、以上の研究成果のうえに、とくに、運動の担い手、その論理、組織形態等について研究した。とりわけ、社会民主党の理論が、農民によって独特のかたち(16世紀の農民戦争の指導者ド-ジャ・ジェルジの再来などとして)で理解されていく過程、社会主義の理論が宗教異端の教義と結合して農民に受け入れられていく過程を研究した。再洗礼派、精霊降臨派、アドヴェンテイストといったキリスト教の宗教異端が、反体制、反不平等などの理念を得く社会主義の理論と合致していった。また、運動が、1870年代までハンガリー各地で活動した義賊の遺産を受けているという兆しもあるが、これは今回、十分に解明することはできなかった。
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