本年は広く文献・資料を集めたばかりでなく、とくに中央アジアのガザフスタン、ウズベキスタンを中心に多くの新刊の雑誌・資料を集め、複写することができた。また、旅費を活用して大学や研究所などで、国内やCISの研究者との討論や情報交換をおこなうチャンスもうることができた。 その成果の一部はすでに論文としたが、「カザフスタン独立国家形成の前提について」は、多民族性のとくにいちじるしいカザフスタンについて、そのアイデンティティの形成過程を、地理、民族構成、国家、経済、政党、宗教など歴史的、総合的に考察し、今後の展望をうるための基礎としようとしたものである。ここでは、ロシアとの関係を強調した。この国は革命前遊牧地帯であったが、若干条件が異なり灌漑農業がおこなわれている綿作地帯のウズベキスタンについて、別の論文を執筆中である。 「ソ連の成立とその影響」は、1922年末のソ連の形成に重要な役割を果たしたザカフカジエのアゼンバイジャンの革命以後の動きを分析し、共産党の建設、ソ連の結成、計画経済の形成の三者が密接に結びついていることを示し、1991年の事態の理解を逆の面から深めようとした。 2つの単著は、CIS諸民族の動きを、世界史とソ連史のなかで歴史的に位置付けることによって、今後の研究の方向を確かめておこうとしたものである。
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