ゲルマン諸部族がシュレースヴィヒ=ホルシュタイン、ニーダーザクセン、ラインラント、シュヴァーベンなどにおける自然文化的環境のなかで、どのような定住発展をし、彼らの自然・人間観はどのようであったか。これについて、考古学的資料に基づくゲルマン文化の部族的・地域的確定、住居形態・集落形態、農業経営、文献史料の諸部族法典・勅令内容に基づく人びとの心性と民衆法・統治法の部族的・地域的共通点・相違点を具体的に検討した。今年度の研究によって得られた新たな知見の成果は、次の通りである。 1.コナラ、ブナ混合樹林帯で、聖森林信仰のもとに生活し、ド-ナウI・II文化の影響を受けたドゥレンリート、リ-トシャッヒェン、フェーダァゼ-・モ-ア、ブ-ヒャオの古定住、小集落において、公共の集会・祭祀場、乾燥用建物を利用する共同体的性格、複合大家族に包摂された個別的生産・生活主体の小家族の実態。 2.フレーゲルン、フェッダーゼン・ヴィールデの定住において、農耕・家畜飼育と並んで、陶器製造・金属製錬・加工の手工業、交易も発達し、経営を拡大させた首長ホ-フの出現が特徴的である。 3.「母なる大地」、豊穣神、集落祭祀の神、家と婚姻の守護神の信仰のもとで、村落共同体成員の助け合いがみられた。 4.『レークス・サリカ』『レークス・リブア-リア』に基づき、殺傷・盗み・放火、他人の家族の破壊の極刑による厳罰、幼弱者についてのいたわり。『レークス・サクソヌム』に基づき、人としての生得権(エ-ヴァ)を生むに至った人間観の存在。
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