フランス革命期から第三共和政初頭までのサヴォワの歴史を通史的に概観し、その時期区分を行なうことを第一の課題とし、時期区分については一定の結論に達し、とくに次の点が明らかとなった。第一に、中世末以来フランスとの間で紛争が起きており、フランスに占領されるなど、フランスとの関係は複雑であった。また、サヴォワはフランスに先駆けて1771年には有償廃棄の形で封建制が廃棄されていた。第二に革命期については1792年にフランスに併合されて以降は基本的にはフランスの全国政治の動向に左右されながら、カトリック信仰の根強さと、国境地方に位置し、対外戦争が間近で展開されたという特殊な状況のため、独特の展開も示していることがわかった。たとえば、国有財産売却を見れば、明らかにブルジョワ革命であるが、革命の急進化、とくに革命政府の非キリスト教化政策には民衆は強い抵抗を示している。第三に、のちの1860年の最終的な併合との関連では帝政期の経験が重要であること、第四に1815年に旧制度が復活したが、1848年に制限選挙に基づく議会制が導入されたことがわかった。以上のように、サヴォワの歴史を通史的に概観し、その時期区分を行なうという第一の課題については、当該時期の当初の計画と比べ、時期区分についてはほぼ見通しを得ることができた。第二の課題は、代表的なフランスの歴史家がどうこの時期のサヴォワを扱ってきたかを検討した。その結果、とくにミシュレやマチエなどの革命史家のなかに、フランスへの併合を自発的に受入れ、フランスの思想・文化の優秀性と普遍性を示す例としてあげられていることがわかった。
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