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1997 年度 実績報告書

イギリス絶対王政期の国王宮廷の構造的研究

研究課題

研究課題/領域番号 07610387
研究機関広島大学

研究代表者

井内 太郎  広島大学, 文学部, 助教授 (50193537)

キーワードテューダー朝 / King's Household / 国王金庫 / 国家財政 / プリヴィ・チェムバ-
研究概要

過去2年間の研究において、テューダー朝期の宮内府(the King's Household)内にプリヴィ・チェムバ-(Privy Chamber)が成立する過程について検討してきた。その成果として同局が単に国王の私生活の場にとどまらず、国王の権威の発現の場として宮廷社会において中心的な位置を占め、また国家財政運営にも深く関わっていたことを明らかにした。今年度の研究ではこれらの成果を受けて、16世紀半ばの国王金庫(the King's Coffers)」の運用の実態について検討した。
国王金庫は基本的にプリヴィ・チェムバ-の職員が管理する私的金庫であった。16世紀半ばの国家財政は、度重なる戦争による財政負担の増加、行政機構拡大による経常費の増加、物価の高騰などの原因により、かつて見られなかったほどの危機的な状況に直面していた。そのため国王政府は、部局の統廃合、財務行政活動の調査、経費節減、通過改革などの方策を通じて、この危機を乗り切ろうとした。そうした方策の1つといて、この国王金庫が積極的に用いられたのである。その理由は、国王金庫の持つ特殊な性格に由来する。すなわち、国王金庫は、あくまでも国王の私的な金庫であったことから、非公式性と融通性を兼ね備えており、国王は比較的自由にそれを用いることができたのである。緊急時の国家財政運営は、何よりも迅速性といかなる状況にも対応できる融通性が求められた。そのため国家財政収入の主要部分が、まず国王金庫へ準備金として集められ、いかなる危機的な状況へも迅速に対応できる体制を整えられたのである。
このように宮内府は国王金庫を通じて16世紀半ばに国家財政運営に深く関わっており、かつてエルトンが主張したように、1530年代以降に宮内府は国政からまったく退いて国王家政の運営に活動を限定されたわけではなかったのである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (1件)

  • [文献書誌] 井内太郎: "テューダー中期の財政危機と国家財政運営" 史学研究. 217. 69-88 (1997)

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公開日: 1999-03-15   更新日: 2016-04-21  

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