研究概要 |
研究代表者坂井は,カンパニアにおける前5世紀の都市の代表例として,ポンペイ遺跡をとりあげ,とりわけ城壁の建築建築の変遷に見られる都市形成の過程に関する研究を行った。その結果,現存する城壁に先だって少なくとも2種類のより古い段階の城壁が存在することが,考古学的証拠より確認された。そのうち最も古い段階の城壁は,併存する遺物から見て前6世紀に建設されたと考えられ,過去の本研究成果に照らし,この段階のカンパニアの政治的ヘゲモニニ-を握っていた,エトルスキ人の手によるポンペイ都市建設の可能性が析出された。その次の段階の城壁は,従来の研究によれば前5世紀のエトルスキ段階以降の建設であるといわれてきたが,ポンペイ遺跡の他の発掘データと比して,この時期に大規模な城壁建設が行われたとは考えにくく,前5世紀初頭以降の建設である可能性が高い。その時期以降ポンペイにおいては都市生活の連続性が認められるのである。またポンペイ都市における公共建造物の発展段階を概観し,都市建設後の発展に関する歴史的背景研究を行い,都市の本格的成立はヘレニズム時代以降のことであることを明らかにした。 研究分担者浅香は,カンパニアにおける都市建設の歴史と平行して,中部イタリアの都市起源問題を研究し,とりわけローマの都市起源問題を,伝承・考古史料の両面から検討し,前6-5世紀におけるイタリア半島中南部の都市建設に関する全般的な研究見通しを立てるための,基礎的研究を行った。
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