先史時代における姫島産黒曜石の利用について、石器製作の一連の過程を通して姫島産黒曜石の生産・流通に関する研究を行う。 原産地である姫島島内の分布調査を行うが、先史時代遺跡としては縄文時代晩期の用作遺跡1箇所のみで、新たな遺跡は確認できなかった。島では原石の採取が主体的に行われ、石器製作は島以外の場所で行われて、島内に原産地遺跡が存在する可能性は極めて低い。 姫島と対峙する国東半島海岸部の縄文時代の羽田遺跡(国東町)・弥生時代の熊尾遺跡(武蔵町)など原産地遺跡と判断される遺跡が存在する。 姫島産黒曜石製石器の出土遺跡について、大分県内をはじめ、北九州・本州西部、四国西南部、東九州・南九州などの地域で調査を行う。大半の遺跡では姫島産黒曜石製の石鏃などの製品のみが発見され、各生活遺跡で生産を示唆する資料は皆無に近い状況である。 姫島と距離的に近い遺跡のごく一部で少量の原石や石核は発見されているが、姫島産黒曜石の流通の基本的な在り方は、姫島に近接する海岸部の原産地遺跡において石器が集中的に生産され、周辺地域の生活地にもたらされると言う石器生産と流通の構造が考えられ、しかも姫島の原産地での原石の管理も行われていた可能性があることから、縄文時代の前期以降には専業的な集団の存在が予想される。 石器産黒曜石の生産と流通の問題を究明する上で、姫島周辺の海岸部ないし河川流域での原産地遺跡の発見と調査を重ねることが必要とされ、また佐賀県腰岳黒曜石との関連も問題視される。
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