本研究は、考古学において動物遺存体の研究をする際に必要となる基礎的資料を整備することを目的としている。ただし、ここでは時代を縄文時代に限定し、1)出土した動物遺存体の内容のデータベース化、2)同定において参考となる骨格図の画像データベース化、3)研究方法の確立という流れで進めている。本年度は1)では関東、東海、中部、北陸地方に所在する遺跡の発掘調査報告書や論文等のうち、同定報告のなされている文献を中心選択し、遺跡や遺存体の属性、焼骨の有無、文献名を抽出した。そして、筆者がすでに作成している北海道・東北地方のデータベースに追加入力した。東日本の出土例のすべては網羅できていないが、従来は出土可能性が低いとされた内陸遺跡からの焼骨が増加していることが判明した。遺存体研究も個々のデータを扱う段階から、全国的な視野に立って解釈する段階へ移行していく必要がある。2)では軟骨魚類、サケ科、日本犬を対象とするが、この目的のためにはまず現生種の骨格標本を作製する必要がある。今年度は軟骨魚類では5種、日本犬では2種類を収集し、骨格標本を作製した。また日本犬は入手が困難なため、日本犬及びニホンオオカミを所蔵している国立科学博物館において計測及び写真撮影を行った。頭骨についてはほぼ計測を完了したが、体部骨格については未了である。サケ科は今年度は採集を行わず、水産学関係の文献を収集することにより同定の手がかりを模索した。しかし、遺跡の遺存体に応用できる研究はあまりなく、今後、標本の比較研究により考古学でサケマス類と一括されてきた遺存体の同定精度の向上を検討しなければならない。また、市販のアプリケーションソフトに骨格図を入力し、画像データベースを作成した。現段階では資料数が少ないが、これから1)では西日本の資料収集、2)では軟骨魚類・サケ科標本の収集継続により資料の充実を図り研究を展開していく。
|