今年度は、平成7年度に実施した伊勢神宮・鹿島神宮・香取神宮・出雲大社・諏訪神社・宇佐神宮・赤城明神社・貫前神社などにおける式年造替の実態と柱の腐朽状態についての調査に引き続き、飛鳥地域の諸宮・前期難波宮・平城宮など7〜8世紀の宮殿遺跡と、東北地方の城柵官衙遺跡、九州地方の山城や官衙遺跡における掘立柱建物や外郭施設等の存続期間を中心に調査・検討した。 その結果、宮殿・官衙遺跡では、必ずしも建物の耐用年限にとらわれず、天皇の即位や制度の改革に伴う全面的な改築や礎石建物への改変がかなり頻繁に行われたこともあり、式年造替を原則とする神社とは異なる様相が認められた。また、記録が少ない宮殿・官衙遺跡では、その存続期間を正確には把握できないという限界も常につきまとう。しかし、遺跡全体の存続期間とその間における遺構の変遷時期を概観すると、その多くは7世紀後半から8世紀後半、あるいは7世紀末〜8世紀末というようにおよそ100年前後存続したことが知られるが、その間に3〜4期ほどの変遷が認められる遺跡が多い。単純に4期としてその存続期間は25年、3期として30数年という数値が得られる。したがって、個々の遺跡における細かな存続期間の検討はなお残されるものの、基本的にこれら宮殿官衙遺跡の掘立柱建物の耐用年限は25年以上と考えられ、中には30年を超えてなお存続した建物もいくつか存在したと推測されるに至った。
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