京都中央語だけでなく広く日本全国の方言を見渡した新しい日本語の歴史記述をめざして地方語の資料発掘、その評価に取り組むというのが本研究の目的であるが、前年および本年の探査によって相当の成果を上げることができた。方言を記述した第1種地方語資料のうち、日本語俗言解、伊勢浜荻、陸奥方言については、テキストフアイル化を進めており、近いうちに簡単な解説研究を付して利用しやすいかたちで公表したいと思っている。東北大学狩野文庫蔵の筆満可勢は日本庶民生活史料集成第三巻に一部翻刻されているが、未収分にも方言記述が相当含まれていることが分かった。 第2種地方語資料(地方出身の執筆者の言語が文章中に反映しているもの)としては、特に東国抄物に関心をもっていたのであるが、人天眼目抄(中巻零本)江潮風月集抄(東博)を入手したくらいで特に目立ったものを発掘するまでには至らなかった。この期間に北野目代日記、梅津政景日記について原本、影写本等について詳細な調査を行った。両者ともかなり大部のものであるが、特に目代日記については仮名字体の一つ一つについてまで調査を行った。「つ」に二種類の仮名があり、その用法を通してこの資料が東国文献である可能性があることを論文にまもめて報告した。
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