この調査研究は、これまで断片的にしか分かっていない東京語アクセントの古層について詳細な調査・分析を行い、標準語アクセントの基盤としての東京語アクセントの成立のプロセスを明らかにすることを目的とする。まず、代表的な数地点を選定し、高年層を対象に数千語についてアクセント調査を行い、東京の多摩地域を含む関東各地には、東京で滅びてしまった、あるいは消えかけている古いアクセント型を有する単語がどの程度残存しているのか、また、都区内に見られない独特の型をもつ単語がどの程度存在するかを明らかにする。 本年度は、柴田武監修、馬瀬良雄・佐藤亮一偏『東京語アクセント資料』(1985)で明らかにされている、都区内でアクセント型の世代差の認められる数千語を中心とし、その中から日常的に多用する語、および、都区内と異なるアクセント型の予想される語、合計約1000語を選択した。さらに、上記以外の単語の中から東京周辺地域に独特の型の存在が予想される単語約1000語を選び、合計約2000語について、埼玉県秩父市、および、千葉県銚子市において、各地点とも高年層数名を対象に調査を行った。また、調査結果を録音したテープを聴取・記号化し、その一部をコンピュータに入力した。調査結果は現在分析中であるが、予想したとおり、東京では絶滅しかけている古いアクセント型をもつ語が多数抽出される見通しである。また、東京アクセントとは異なる各地域独特の型をもつ単語もかなり認められた。
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