平成九年度においては、学習院大学・東京大学・慶応大学等で、それぞれ中世小説の伝本について調査し、許可の下りたものは写真撮影や複写を行い、また翻刻を行って、本文を蒐集した。また、中世小説や散逸物語に関する文献の調査・収集を行った。また国立国会図書館・国文学研究資料館等においても、資料収集・調査研究を行った。具体的には、次のような成果があった。 学習院大学・・・附属図書館で、『岩屋物語』の書誌的事項について調査し、複製本によって複写を行った。文学部日本文学研究室では、『しぐれ』について、室町期の写本を閲覧し、写真の撮影をさせて頂いた。 東京大学・・・総合図書館で、中世小説に関する伝本の閲覧、資料の収集、複写を行った。文学部国文学研究室では、関連資料の収集を行った。 慶応大学・・・三田メディアセンターにおいて、中世小説『しぐれ』『岩屋物語』『伏屋の草紙』等の閲覧と書誌的調査、翻刻、並びに複製を行った。 国文学研究資料館・・・中世小説関係の論文の検索・資料収集等を行った。 国立国会図書館・・・中世小説・散逸物語関係の資料を収集した。 京都大学・・・附属図書館で、中世小説関係の資料の閲覧を行った。 これらの収集した諸本の本文・研究図書・論文については、現在、整理・考察を行っている段階である。また、これらの調査研究を活かして、年度内に研究発表一回、紀要等の論文四編、出版社の論文集に一編執筆した。特に、今回は、挿絵と本文の関係について、種々の場合において興味深い例を発見した。就中異なるジャンルの作品において、同じ挿絵が流用されている例を発見した点は一つの成果と言える。また、散逸物語と中世小説の関係について、『扇流し』という作品について、一つの見通しを得られた。さらに挿絵の保存・比較のために、イメージ・スキャナを購入した。
|