I 本文研究:1)ニューヨーク公立図書館スペンサー・コレクション蔵『百鬼夜行物語』絵巻-解説・翻刻-本書は、関係書として、京都大徳寺の真珠庵および東京国立博物館模本とがある。絵は、前者と密接な関係にあるものである。ただし、相違点は、真珠庵本にはない巻頭の二図と一四五行の詞書とを有することである。筆者については巻末に、江戸後期の復古大和絵派画家「式部少丞菅原為恭」と記す。これについて、反町茂雄『スペンサー・コレクション蔵日本繪入本及繪本目録』増補改定版の解説によると「末に、『式部丞菅原為恭図之』」として印があるのは、後人の妄書で、絵は為恭の時代よりズッと古く、筆力がある。或いは古画を模したものか」とあるのは、同氏の意見とみてとれる。内容的には、舞台を治承の末年の福原遷都と思われる時代に設定した詞書は、為恭の視る挿絵の解釈であるとしても難はなく、説話研究のみならず、美術史家による従来の本絵巻解釈の上にも重要な課題を提起することであろう。2)フリーア美術館蔵『鶴草紙』は、諸本のなかで、「別本」(市古貞次蔵本)・京博本に近似する作品である。本文の系統について、「別本」は、フリーア本・京博本の混態で、フリーア本は京博本と縦の系列につながるかどうかについては即断を許さない。系統本研究および国語学の面からも辞書に新たな語彙を提供し得るなどの重要性を指摘する。以上二点については、1997年12月に掲載済み。 II『在外日本絵巻の研究と資料』:既刊の資料および分量的に学会誌等による発表の不可能な未発表数点をあわせて、上記の書名で1999年2月までに刊行の予定、入稿済み。よって本書の刊行を以て、平成7年度〜平成9年度科学研究費補助金実績報告書は完了する。紙幅の都合上、未公開資料の題名のみを次に挙げておく。 ・スペンサー・コレクション蔵『弘法大師絵巻残闕』 一巻 同『源氏物語絵巻』 二巻 ・バ-ク・コレクション蔵『大職冠』 三巻 ・大英図書館蔵『天狗の内裏』 二巻 ・大英博物館蔵『釈迦の本地』 三巻 上記の書については、すべて掲載許可取得済みである。 以上
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