板倉家関連資料研究のために、高梁市立図書館・岡山県立図書館・岡山大学池田文庫などに出張調査を行った。その結果、高梁市立図書館の目録整備を行い、さらに調査過程の中で、新資料の発見を見ることが出来た。これは近世初期の代表的国文学研究者である加藤磐斉と板倉家の親密な関係を傍証するものであり、京都周辺大名文芸圏の成立に関する重要な資料である。この結果は、平成8年度科学研究費補助金「研究成果公開促進費」の交付を受けて出版した『近世大名文芸圏研究』(八木書店・平成9年2月刊)に発表した。又、一関市立図書館の田村家文書の研究のために出張調査を行った。この結果、一関藩主田村建顕の和歌資料の中から、従来学会などでは未発表の建顕の修学期の堂上歌壇との関係を示す資料を見出し、これを翻刻紹介した。この結果は、前掲書『近世大名文芸圏の研究』の中に所収した。亀山藩・烏山藩の調査研究は時間的な余裕がなく、十分の調査が行えなかったが、国文学研究資料館、天理大学図書館・京都大学付属図書館、東京大学史料編纂所等の調査研究によってこれを埋めることが出来た。ことに、中世末から近世初期にかけての代表的歌人であり、永井家にも仕え京都武家文化人として知られる佐川田昌俊に関連する資料の調査研究を行うことが出来た。この結果も、前掲書の中に補入した。西尾市西圓寺所蔵貴重書解題の調査は、西圓寺の都合により一部のみの調査に終わったが、既調査分については個別の調査報告書は作成しなかったが、その成果は前掲書の中に盛り込むことが出来た。 以上の結果、近世文学史の構築のために近世初期京都大名文芸圏を中心とする様相をかなり明らかにすることが出来た。又、近世文学における大名またその周辺にあって文芸担当の役割を果たした人物との関わりについて、今後の研究の基礎的な調査を行い得た。
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