三ケ年計画の初年度である今年度は、研究計画に基づき、 1.京都大学附属図書館、京都府立総合資料館、陽明文庫へ赴き、禁裡周辺の文庫の目録調査を行った。禁裡周辺の公卿家の図書目録の発掘と整備を行うことにより、火災・戦乱等により散佚した典籍の享受の相が或る程度見当づけられ、禁裡蔵書目録に登載される典籍について、現存、非現存の確認をすることができる。 例えば、「禁裡御蔵書目録」と同時代の宮内庁書陵部蔵「桂宮書籍目録」を比較すると、宮家の文庫の性格が禁裡本と一体なものであり、禁裡本が年代を追って、層をなして成長する様を捉えるために貴重であることがわかる。また、それ自体智仁親王の御撰本や文芸活動を窺う上でも、元和頃迄の古活字版の出版事情、堂上の学芸を窺う上でも多様な価値を持つ資料である。 2.禁裡本の正確な戸籍を作成する作業として、「本朝書籍目録」、「仙洞御所目録」、「東山御文庫禁裡蔵書目録」「同御蔵書目録」、「同御文庫目録」から典籍情報を抽出し、パーソナルコンピュータに入力してデータベースを構築中である。このうち、東山御文庫禁裡蔵書目録及び書陵部の図書目録からの桂宮本の抽出目録については整理を終了した。 また、中世後期から近世にかけての重要な古記録を選び、書籍の贈与・貸借に関する情報を抽出し、データ化を行っている。
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