当年度実績の第一としては、「弘前藩庁日記」江戸日記の部について、元禄初年から末年まで119冊の調査を終え、41条の歌舞伎・浄瑠璃関係記事を発見したことである。これによって「弘前藩庁日記」江戸日記の部の元禄末年まで211冊に所載された、歌舞伎・浄瑠璃関係記事は65条となった。これらの記事の翻刻も終えることができ、すべて新出の演劇史資料として、学界に益するところ大となろう。その成果の一部は、平成8年1月20日の演劇研究会において発表した。 実績の二は、「弘前藩庁日記」御国日記の部にも、芸能上演記事が所載されていることを発見したことである。 具体的な作業報告を、以下箇条書きにする。 (1)弘前市立図書館蔵「弘前藩庁日記」のうち、元禄期の「江戸日記」119冊を精読し、芸能の上演記録を抽出した。 (2)抽出された芸能上演記録の写真化を行った。 (3)(2)によって、元禄期の「江戸日記」に記録されている、芸能上演関係の記事41条の翻刻を終えた。 (4)弘前市立図書館蔵「弘前藩庁日記」のうち、寛文から天和期の「御国日記」125冊の下調査を行い、これにも「江戸日記」記事と密接な関係をもつ、芸能上演記事が所載されていることを発見した。 (5)演劇研究会平成8年1月例会において「座敷芝居の経済」として、本研究成果の一部を口頭発表。その際、「津軽家文書『弘前藩庁日記』(江戸日記)抄」と題した私家版小冊子(全115頁)を配布した。
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