稲田は、1950年代以降のアメリカの社会的・文化的変化を扱った図書や男性学関連の図書を収集し、この時期にアメリカの思春期の男女がどのような社会的・文化的変化の中にあったかを把握することに努めた。ついで、J.D.SalingerのThe Catcher in the Rye (1951)とSylvia PlathのThe Bell Jar (1963)を「思春期文学」として取り上げ、両主人公の少年・少女の心理、ジェンダー、社会・文化的環境、社会化を比較することで、両者の類似点や相違点を考察した。稲田の研究結果は、現在論文として執筆中である。 吉田は、インターネットを通じて学術情報センターのデータ・ベースに入り、国内外の関連研究機関からジェンダー学、思春期の心理学、アメリカの社会・文化研究に関する文献を収集した。また、緊急の場合は、関連の研究機関に出張して資料や文献の入手に努めた。1995年には、吉田は、思春期文学にみる変化を遂げる男性性に関する論文を2点発表して、知名度の高い思春期小説--The Man Without a FaceとThe Chocolate War--を男性学の観点から見直した。1996年から1997年には、「ポスト・コロニアリズム」の観点からジェンダー問題を扱った論文3点を発表したが、まもなく英語で書かれた論文2点も国際誌で発表の予定である。また、6月と8月に国際学会、International Children's Literature AssociationとInternational Research Society of Children's Literatureで口頭発表の予定である。 当研究の今後の課題としては、小説の主人公たちの民族的な多様性や同性愛をふくめたセクシュアリティの問題により焦点を当てた研究が考えられる。
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