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1996 年度 実績報告書

ディケンズの徒弟小説の起源に関する史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 07610474
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東北学院大学

研究代表者

原 英一  東北学院大学, 文学部, 教授 (40106745)

研究分担者 遠藤 健一  東北学院大学, 文学部, 教授 (20118326)
キーワードCharles Dickens / 徒弟 / 都市喜劇 / 犯罪者 / カ-ニバル / 教養小説
研究概要

前年度の研究により、ディケンズの徒弟小説の起源が、十八世紀の小説勃興時ではなく、むしろ十七世紀初頭からの演劇の伝統の中にあることが確認された。本年度は、このことに基づき、十七世紀の演劇、特に都市喜劇を中心とする演劇における「徒弟」的要素の抽出と、その徒弟的要素が徒弟小説へと展開する歴史的過程に研究の中心を置いた。その結果、Dekker,The Shoemakers'Holiday、Heywood,The Fair Maid of the West,Middleton et al.,The Roaring Girlなどの演劇において、徒弟ないし徒弟的登場人物が、社会の秩序を脅かす危険性を備えたものとして提出されていることが明らかとなった。当時のロンドンにおいて一つの階級として存在していた現実の徒弟たちは、告解火曜日などの時期に、集団で暴力的行動に及んだことが知られている。彼らの反逆的エネルギーは、公的に容認された形での「カ-ニバル」によって、そのはけ口を与えられていた。演劇も一つのカ-ニバルであり、その祝祭的構造の中に勃興する中産市民階級の予備群である徒弟集団は組み込まれ、そのエネルギーを体制に寄与する方向へ変換させられたのであった。このような演劇は、演劇閉鎖と王政復古の時期においては、その徒弟的要素を一時的に隠蔽することになったが、王政復古期末期のVanbrughやFarquharの芝居において、都市と田舎との水平的分離及び市民階級と犯罪者階級との垂直的分離として、再び顕在化した。それは、大衆的な犯罪者伝記文学の隆盛と時を同じくしており、徒弟の反社会性が、新たな表現手段を与えられたことを意味している。徒弟は、社会の下層、文化の下層としての意味を強めることとなり、「女性」と融合することによって、小説という新たなジャンルの誕生を促したことが明かとなった。本研究によって、徒弟小説はイギリス小説そのものの本質であることが示唆されるに至った。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (1件)

  • [文献書誌] 遠藤健一: "範疇化の病-ユートピアとしてのフウィヌムのディストピア性" 日本18世紀学会年報. 11. 17-19 (1996)

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公開日: 1999-03-08   更新日: 2016-04-21  

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