平成8年度は、前年度に引き続いて、アメリカ植民地時代に関するさまざまな情報やピューリタニズムについての文献、および、アン・ブラッドストリートやエドワード・テイラーに関する批評や解説類を資料として入手して、重要だと判断するものから、順に、データ・ベース化を進めた。同時に、コンピュータに入力する作業を続行中である詩作品のクロス・レファランス等を活用しながら、主として、アン・ブラッドストリートに関して、考察した。 まず、彼女の家族関係としては、なぜ、彼女たちが一家としてイギリスからアメリカへ移住してきたのか、マサチューセッツ湾植民地の総督を務めた父へ、彼女は、どういう思いを抱いていたのか、また、植民地の要職を務め、イギリスに交渉にまで行った夫サイモンとは、どのような生活をしていたのか、彼との愛情生活はいかなるものであったのか、さらには、彼女が自分の子どもへ、どのような愛情を持っていたのかを分析した。そして、そうした家族関係が、正統派ピューリタニズムのなかで、どう位置づけられ、どの辺りで、正統派からはみ出しそうになるのかを考察した。この際に、人称代名詞の使用方法などを手がかりにしながら、彼女の信仰における神の位置と意味を解明しようとした。 アメリカ文学会や英文学会を中心として、日本の他の教育機関に所属する研究者との交流を積極的に行った。 平成8年度末には、アン・ブラッドストリートに関して、「ピューリタニズムにおける性と回心」というタイトルの論文を、後藤昭次編『アメリカ文学のポリティクス』(大阪教育図書)に収めた。
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