本研究は、アメリカ植民地時代における宗教、とりわけ、ピューリタニズムを視野に納めながら、ピューリタン詩人における宗教観と創作との関係について考察・研究することを目的とした。総括的に言えば、3年間にわたる研究は、(1)アメリカ植民地時代においてピューリタニズムが文学に対して果たした意味と役割に関する文学史的、精神史的な考察、(2)個別の詩人、特に、アン・ブラッドストリートとエドワード・テイラーが、ピューリタニズムを彼女らのそれぞれの人生と創作においていかに位置づけているかに関する伝記的、文体論的研究、(3)(1)及び(2)の過程で収集される文献の整理、という3段階に区分された。 本研究は、伝統的な文学分折方法に則って、ピューリタニズムを歴史的・政治的・宗教的に視野に入れながら、アメリカの詩人の発祥を探り、また、ピューリタニズムが支え刺激した結果として生まれた詩作品を読解していった。ピューリタニズムが創作を抑圧したというこれまでの通説の一般的な正しさを認めながらも、アン・ブラッドストリートに関しては、宗教が生活に根ざすなかで、いかに創作を支えたのかを解明した。エドワード・テイラーに関しては、生活が宗教そのものであるなかで、いかに想像力が既成概念から逸脱してゆくのかを解明した。そして、これらの解明を通して、ピューリタニズムが、むしろ、個別の作者への作用に差はあるものの、結局のところ創作を刺激していった点で、積極的に再評価されるべきことを明らかにした。 本研究によって、アメリカ植民地時代の精神構造が理解され易くなるだけでなく、アメリカ文学の創作者たち全般に共通するような想像力の秘密が明らかにされたと確信している。
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